採用に携わっていると、「カルチャーフィットを重視しています」という言葉をよく耳にします。カルチャーは採用においてとても重要な要素だと思っています。ただその一方で、「カルチャーフィット」という言葉は、とても便利だからこそ、少し曖昧なまま使われている場面も少なくないように感じています。そもそもカルチャーとは何なのか。カルチャーフィットとは何を意味するのか。RPOとして様々な企業の採用を支援する中で感じていることを書いてみます。
「良い会社」ではなく、「自分に合う会社」
私自身、これまで複数の会社で働いてきました。その中で「カルチャー」というものを最も実感したのは、転職を経験したときでした。
最初に入社した会社は、中堅規模だったこともあり、良い意味で業務の守備範囲が曖昧でした。「やってみたい」と手を挙げれば任せてもらえる。部署を越えて意見を出すことも歓迎される。そんな、自ら動くことを評価してくれる文化がありました。
一方で、その後に転職した会社では、意思決定のスタイルが大きく異なりました。経営トップの考えや方針を軸に組織が動き、その方向性に沿って着実に実行することが重視される文化でした。最初の会社で評価されていた行動が、別の会社では必ずしも歓迎されるわけではない。そう感じて、道半ばでこの会社を早々に退職しています。
これらの経験を通じて、「どちらが良い・悪い」ではなく、「会社ごとに大切にしている価値観はこんなにも違うのか」と実感しました。
カルチャーフィットとは、「良い会社かどうか」ではなく、「自分に合う会社かどうか」を本質的に考えること。
カルチャーは会社単位だけではない
RPOとして採用を支援していると、もう一つ感じることがあります。それは、カルチャーは会社全体だけではなく、部署ごとにも存在するということです。
- 営業部門はスピード感を重視し、まず動いてみることを大切にしている
- 開発部門は慎重に議論を重ね、品質を最優先に意思決定をしている
- コンサルティング部門では、日頃から活発にディスカッションが行われ、お互いの考えをぶつけ合うことが当たり前になっている
どれも間違いではありません。むしろ、その部署の仕事を進める上で必要だからこそ形成された文化です。だから私は、「カルチャーフィット」という言葉を使うのであれば、会社全体だけではなく、実際に働く部署の特色や日常のコミュニケーションまで含めて考えることが大切だと思っています。
「カルチャーがあります」では伝わらない
採用活動の中で、「挑戦できる社風です」「裁量があります」「風通しの良い会社です」という表現を目にすることがあります。もちろん、それらは会社の特徴なのでしょう。ただ、その言葉だけでは、候補者は働く姿を想像することができません。
- 挑戦できる社風です
- 裁量があります
- 風通しの良い会社です
- 若手でも手を挙げればプロジェクトを任せてもらえる
- 毎週、部署全員で成功事例や失敗事例を共有している
- 上司との1on1で、業務以外のキャリア相談も自然に行われている
ここまで具体的になると、その会社で働く日常が少しずつ見えてきます。私は、カルチャーは「説明するもの」ではなく、「感じてもらうもの」だと思っています。候補者が「この環境なら自分も楽しく働けそうだ」というイメージを持てて初めて、その会社のカルチャーは意味を持つのではないでしょうか。
「特徴」が「魅力」になる瞬間
私は、企業が伝えられるのは「魅力」ではなく「特徴」だと思っています。「挑戦を歓迎する会社です」「裁量があります」「スピード感を大切にしています」——これらは、企業が持っている特徴です。
その特徴を、「面白そう」「自分に合いそう」と候補者が感じたときに、初めてその特徴は「魅力」になります。逆に言えば、ある人にとって魅力的な特徴が、別の人にとっては不安材料になることもあります。
だからこそ、企業が一方的に「これが当社の魅力です」と伝えるのではなく、まずは自社の特徴を正しく言語化し、候補者が働く姿を想像できるように伝えることが大切なのだと思います。
カルチャーフィットは、企業と候補者が互いに確かめるもの
私は、カルチャーフィットは企業が候補者を評価するためだけのものではないと思っています。候補者もまた、「この会社は自分に合いそうか」を見ています。だからこそ、採用活動では企業側も、自社のカルチャーやマインド、スタンスをできるだけ具体的に伝える努力が必要です。
- 会社として大切にしている価値観は何か
- 部署ではどんなコミュニケーションが行われているのか
- どんな人が活躍しているのか
それらが候補者に伝わり、「ここで働く自分」をイメージできたとき、その会社の特徴は初めて魅力になります。
カルチャーフィットとは、企業が候補者を選ぶための言葉ではなく、お互いを理解するための考え方。
- カルチャーフィットは「良い会社か」ではなく「自分に合う会社か」を考えること
- カルチャーは会社全体だけでなく、部署ごとにも存在する
- 抽象的な表現ではなく、日常が見える具体性が候補者に伝わる
- 企業が伝えられるのは「特徴」。候補者が共感して初めて「魅力」になる

