「同じ候補者なのに、面接官によって評価が真逆になる」
採用に関わっていると、このような場面に遭遇することがあります。
現場責任者は「ぜひ採りたい」と言っている。一方で、別の面接官は「少し違う気がする」と言う。社長は「能力は高そうだが、自社には合わないかもしれない」と感じている。
結局、誰の意見を優先するのかで合否が決まり、「なぜ評価が割れたのか」は曖昧なまま終わってしまう。
特に採用の専属担当者がいない企業や、アーリーステージの企業では、採用基準が整理されていない状態で面接が進むことも多く、面接官ごとの評価のズレが起きやすくなります。
ただ、ここで大切なのは、評価が割れること自体は悪いことではない、ということです。
社長と現場責任者では、そもそも見ているポイントが違います。
社長は、将来的に組織を引っ張れるか、カルチャーに合うか、事業フェーズに耐えられるかを見ています。
一方で現場責任者は、今のチームで活躍できるか、既存メンバーと協働できるか、立ち上がりが早そうかを見ています。
つまり、評価が割れること自体は自然です。
問題は、「なぜ評価が割れたのか」を説明できないことです。
面接官によって評価が割れる理由
面接官によって評価が割れる理由はいくつかあります。
まず一つは、面接官ごとに期待値が違うことです。
特に上位者の面接になればなるほど、同じ回答に対して求めるレベルが上がります。たとえば、現場責任者は「十分に説明できている」と感じても、部門長や役員は「まだ浅い」「もっと経営視点が欲しい」と感じることがあります。
また、面接経験の差も影響します。面接慣れしている人ほど、候補者の回答を深掘りし、事実確認をしながら評価します。一方で、面接経験が少ない人ほど、話し方や第一印象に引っ張られやすくなります。
さらに大きいのが、「何を評価するか」が決まっていないことです。
ある面接官は営業力を見ている。別の面接官はカルチャーフィットを見ている。別の面接官は転職理由や価値観を気にしている。この状態では、評価が揃う方が難しいです。
「主体性がある人」「コミュニケーション力が高い人」といった言葉も、人によって定義が違います。たとえば、主体性を「自分で考えて動けること」と捉える人もいれば、「周囲を巻き込んで改善できること」と捉える人もいます。
“良い人”の定義が揃っていないと、面接評価は揃いません。
面接中に評価してしまうことも、評価がブレる原因
面接評価がブレる原因の一つは、面接中にその場で評価してしまうことです。
候補者が入室して数分で、「なんとなく良さそう」「少し違うかもしれない」と感じ、その印象のまま面接を進めてしまう。そうすると、本来確認すべき事実よりも、自分の第一印象を補強する情報ばかり集めやすくなります。
話し方が上手い人は高く見えやすく、逆に緊張している人や、話し方に癖がある人は低く見えやすくなります。しかし、面接官によって印象は変わっても、事実は変わりません。
どんな経験をしてきたのか。どのような役割を担っていたのか。どんな課題に向き合い、どう行動したのか。本来、面接で確認すべきなのは、こうした事実です。
面接では、その場で合否を決めようとするのではなく、面接後に十分な評価ができるだけの情報を集めることが重要です。面接中はヒアリングに徹し、評価は後から行う。この順番を意識するだけでも、面接の精度はかなり変わります。
実際に評価が割れた事例
以前、中堅メーカーの経営管理ポジションで、面接評価が大きく割れたことがありました。
候補者は、大手メーカーで経理を中心にキャリアを積み、BPRやERP導入プロジェクトにも関わってきた方でした。特にSAP導入時にはFI領域の要件定義をリードしており、経験面ではかなり強い候補者でした。
一次面接では、現場ライン長がその経験を高く評価しました。メーカー経理としての専門性に加え、業務改善やERP導入の経験もあり、自社であれば課長クラスの役割も期待できるという見立てでした。
一方で、最終面接を担当した部門長は異なる見方をしていました。質疑応答に対する反応速度や話し方、経営企画寄りのポジションに求められる”キレ”や”鋭さ”が弱く感じられ、課長クラスとしては物足りないという評価でした。
どちらの評価も間違っていたわけではありません。一次面接では、実務経験や専門性を重視していた。最終面接では、役職者としての振る舞いや期待値を重視していた。つまり、見ているポイントが違っただけです。
ただ、振り返ると、一次面接で「何を評価して通過としたのか」「最終面接では何を確認すべきなのか」が整理されていれば、ここまで評価が割れることはなかったと思います。
採用の専属者がいない企業ほど、評価基準が重要
採用の専属担当者がいない企業や、アーリーステージの企業では、社長や現場責任者が面接を兼務していることも少なくありません。そのため、どうしてもそれぞれの感覚や経験則で評価しやすくなります。
また、急ぎで採用したい状況も多く、その時に必要な経験やスキルを持っている人に、その場の判断で合格を出してしまうこともあります。
結果として、前回は見送ったタイプの人が、今回は通る。部署ごとに評価基準が違う。面接官の好みで評価が変わる。こうしたことが起きやすくなります。
評価基準を固めるために必要なこと
面接官ごとの評価を完全に揃えることはできません。ただ、「会社として何を評価するのか」を揃えることはできます。
そのためには、まず採用したい人物像を言語化することが重要です。ハードスキルとソフトスキルを分ける。Must条件とWant条件を分ける。どの条件が「ないと困る条件」で、どの条件が「あれば望ましい条件」なのかを整理する。
採用基準が曖昧な会社ほど、「できれば欲しい条件」と「ないと困る条件」が混ざっています。その結果、面接官ごとに重視するポイントが変わり、評価がブレやすくなります。
また、面接フェーズごとに見るポイントを分けることも重要です。たとえば、一次面接では経験やスキルを見る。二次面接では現場との相性や働き方を見る。最終面接では価値観やカルチャーフィット、役職者としての期待値を見る。このように役割分担ができていると、面接官同士の評価は揃いやすくなります。
さらに、面接評価は「なんとなく良かった」「優秀そうだった」ではなく、事実ベースで行う必要があります。実際にどんな成果を出したのか。どのような役割を担っていたのか。どんな課題に対して、どう行動したのか。
感覚を揃えるのではなく、評価基準を揃える。これが、面接評価のズレを減らすために最も重要な考え方です。
まとめ
面接官によって評価が割れることをゼロにすることはできません。ただし、「なぜ評価が割れたのか」を説明できる状態は作ることができます。
面接は、その場で「良い・悪い」を決める場ではありません。面接後に適切な判断をするための情報を集める場です。
誰が面接しても一定の判断ができる状態を作るためには、面接官の感覚を揃えるのではなく、会社として何を評価するのかを揃える必要があります。
評価が割れること自体ではなく、評価が割れた理由を説明できないことこそが、本当の問題なのです。
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